2011年02月23日

蛇の脱皮

蛇が脱皮する理由?
最近、読んで感動した一節を紹介します。
宮部みゆきの「火車」という本のなかにありました。

冨山 火車2.jpg

「……あのね、蛇が脱皮するの、どうしてだか知ってます?」
「脱皮っていうのは――」
「皮を脱いでいくでしょ?あれ、命懸けなんですってね。すごいエネルギーが要るんでしょう。それでも、そんなことやってる。どうしてだかわかります?」
 本間より先に、保が答えた。「成長するためじゃないですか」
 富美恵は笑った。「いいえ、一所懸命、何度も何度も脱皮しているうちに、いつかは足が生えてくるって信じてるからなんですってさ。今度こそ、今度こそ、ってね」
 べつにいいじゃないのね、足なんか生えてこなくても。蛇なんだからさ。立派に蛇なんだから。富美恵は呟いた。
「だけど、蛇は思ってるの。足があるほうがいい。足があるほうが幸せだって。そこまでが、あたしの亭主のご高説。で、そこから先はあたしの説なんだけど、この世の中には、足は欲しいけど、脱皮に疲れてしまったり、怠け者だったり、脱皮の仕方を知らない蛇は、いっぱいいるわけよ。そういう蛇に、足があるように映る鏡を売りつける賢い蛇もいるというわけ。そして、借金してもその鏡がほしいと思う蛇もいるんですよ」
 あたし、幸せになりたかっただけなのに。関根彰子は、溝口弁護士にそう言った。
(宮部みゆき「火車」新潮社より)

いかがでしょう。考えさせられる一節だと思いませんか。

担当:冨山恭道

九段下の会計事務所
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posted by tomiyama at 15:45| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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